Twilioを使った音声自動応答をENOKIで作ってみた

皆さんはIVR(音声自動応答)と言えば、どういうものを想像しますでしょうか?

一般的には、電話回線から着信があると、IVRが自動応答として音声ガイダンスを開始し、電話をかけた相手が、音声ガイダンスに従ってプッシュ番号操作すると、担当部署や、知りたいことの自動応答などが行われるといったものかと思います。筆者である私も、自宅で使用しているインターネット回線に関する問い合わせなどを電話で実施するときなど、問い合わせ内容に応じた担当部署に振り分けられてスムーズに対応いただいたりとIVRの恩恵にあずかっています。

しかしながら、筆者はせっかちな一面があり、常日頃から「全部ガイダンスを聞かないと、どの番号をプッシュしていいかわかんないな。ショートカットできないかな・・・」と感じていました。当社は会話プラットフォームを使用した無人チャットボット「ENOKI」を提供していますので、「ENOKIとIVRを組み合わせればプッシュ番号操作ではなく音声で割り振ることができるんじゃない?」と思い至りました。できるかどうかはわかりませんが、まずはやってみよう精神です。

準備

IVRを構築するにあたり、まずは何を使って実現するか。ここからです。

IVRはいろいろなものが世の中には出回っていますが、

あまりお金をかけずに試すことができるもの
ノーコードで構築することができるもの(簡単に実現できそうなもの)

に絞っていろいろ調べてみた結果、「Twilio」というツールで試してみることにしました。Twilioは

電話やSMS・ビデオ・チャット・SNSなど世の中にある様々なコミュニケーションチャネルをWeb・モバイルアプリケーションとつなぐ「クラウドコミュニケーションAPI」

とのことなので、当社ENOKIとの親和性も高いのではないかという点と、「はじめてのTwilioシリーズ – ノーコードでIVR(自動音声応答)構築を体験」というオンラインのハンズオンセミナーを実施されており、筆者のようなIVR初心者でもIVRの構築が容易なのではないかという点が選択のポイントです。また、Twilioはトライアルアカウントが設けられていましたので、試してみるには大変ありがたいツールです。

よし!いよいよTwilioとENOKIを使って、IVRを構築してみます。

ENOKIの設定

ENOKI側で音声自動応答用のデータを作成します。あくまで接続して自動応答できるのかどうかを確認するだけですので、そんなに多くのデータは準備せず以下のパターンに設定しました。

No.カテゴリ1カテゴリ2質問回答
1契約について契約の譲渡契約を譲渡したい契約の譲渡は無償で行うことが・・・
2契約について契約の変更契約の変更はできますか契約内容は月単位で変更が可能・・・
3契約について契約のキャンセル契約をキャンセルしたい契約のキャンセルですね。お手続き・・・
4パスワードパスワードをリセットしたいパスワード紛失ですね。ログインページの・・・
5ルータールーターの交換ルーターを交換できますかルーターの交換ですね。1年以上ご利用中・・・
6ルータールーターのリセットルータをリセットしたいルーターをリセットするには背面の・・・

ガイダンス用の選択肢として、ENOKIにはデータを分類するためのタグを追加しておくことで、候補が複数の場合にガイダンスが自動で行われるという特長がありますので、その選択肢をカテゴリと設定しています。すると、チャットボットとしては、以下のように動作します。

これで、ENOKIの設定は完了です。

Twilioの設定

Twilio側にてIVRを構築するのですが、事前準備としてTwilioの無料アカウントを作成します。(アカウントの作成については、本筋から離れてしまいますので本記事から割愛します。興味のある方はコチラを参照ください。)

コールフローの作成

Twilioコンソールから、Twilio Studioを開き、以下のようなコールフローを作成します。

redirect_1の接続URLはENOKIへ接続して、返却されたレスポンスをTwilio用のフォーマットに変換するマイクロサーバを指定しています。

電話番号に接続

フローに接続するTwilioが提供する電話番号を取得するのですが、Twilioではトライアルアカウントの場合、1電話番号の購入が可能となっていて無料クレジットが使用されるため、使いすぎない限り、無料クレジット内で利用されるというスグレモノです。試してみるには本当に至れり尽くせりです!

TwilioコンソールからPhone Numbersを開き、電話番号を購入します。

以上で、Twilio側の設定は完了です。

音声自動応答を試してみる

準備は整いましたので、いよいよ動作させてみます。

音声による振り分け

Twilio:おはようございます。お電話ありがとうございます。インターネット契約のご質問を承ります。お困りのことは何でしょうか?

”契約について”

Twilio:契約ですね。契約の譲渡でよろしかったでしょうか?

”いいえ”

Twilio:では、契約の変更のことでしょうか?

”いいえ”

Twilio:では、契約のキャンセルのことでしょうか?

”はい”

Twilio:契約のキャンセルですね。お手続きいただいた月の月末にてサービス終了となります。大変残念ですが今までどうもありがとうございました。問題は解決しましたか?

”はい”

Twilio:お役に立ててうれしいです。ご利用ありがとうございます。

できました!
チャットとは違い、音声なので選択肢部分は一つ一つの確認となってしまい、若干遠回りな気はしますがバシッと回答にたどり着ける場合はプッシュ番号操作もなく、すんなり回答にたどり着くのでせっかちな筆者でもストレスなく回答にたどり着くことができました。

直接振り分け

Twilio:こんばんは。インターネット契約のご質問を承ります。お困りのことは何でしょうか?

”契約のキャンセルについて”

Twilio:契約のキャンセルですね。お手続きいただいた月の月末にてサービス終了となります。大変残念ですが今までどうもありがとうございました。問題は解決しましたか?

”はい”

Twilio:お役に立ててうれしいです。ご利用ありがとうございます。

おわりに

プッシュ番号操作を使わずに音声でのIVRは、会話のリセットや会話を一つ戻る際にまだまだ課題が多く実用化されていないのが現状だと思いますが、未来に向けた実現の可能性として示せたのではないかと思います。

プッシュ番号操作は正確なオペレーションや操作バリエーションの豊富さなど優れている点はたくさんありますが、これからは新しい生活様式が提唱され接触にナイーブな時代となってますので、よりよい、そしてより安心できる未来を創るために技術を活用していきたいところですね。

最後に、今回の試作ではIVRとチャットボットは共通のデータでそれぞれを動作させました。ですが、ツールによってはIVR用のデータを作って、チャットボット用のデータを作って、というような顧客とのチャネルを増やすたびにそのチャネル用のデータが必要となってしまう場合もあります。チャネルを提供する側にとってはチャネル用のデータを作成する手間がその分だけ増えてしまっては意味がありません。お客様からの問い合わせにおける待ち時間低減をコンセプトにIVRやチャットボットを導入されているにも関わらず、チャネルを増やすごとに提供する側の準備に要する手間が増えるのであれば、そもそも問い合わせ対応にかける人員を増やしてしまえばいいわけですから。

IVRやチャットボットツールをお考えの方々におきましては、この辺も選定の基準にしていただければと思います。