チャットボットの入力補完機能とレコメンド機能

はじめに

現在、既にチャットボットを導入されている企業様や、これからチャットボットを導入するためにツールをどれにしようか選定中の企業様から、入力補完機能やレコメンド機能のあるチャットボットを選定基準の一つにしているというお話を耳にします。いずれの機能も顧客の入力負荷を軽減したり、顧客からの質問を求める結果に対して誘導することが目的ですが、得られる結果には違いがあることをご存じない方もいるのではないでしょうか。本記事では入力補完機能とレコメンド機能の詳細とそれぞれのメリット、デメリットを説明したいと思います。

入力補完機能

入力補完機能は、ブラウザで検索キーワードに何らか文字を入力してスペースを押すと、候補がいくつか表示されるいつもの機能を考えていただければイメージしやすいかと思います。入力補完機能は入力の手間を省くことはもちろんですが、「何を入力したら求めている結果を得られるんだろう?」というときも、心当たりのあるワードを入力すれば該当しそうな質問が候補として表示されることもあり非常に便利な機能です。チャットボットにおいても、知りたいことを1文字、2文字入力するとプルダウンで補完された候補がでてきて入力の手間やどう聞いてよいかわからないときにはとっても助かります。

メリット

上記のとおり、入力補完機能は「何を入力すれば求めている結果が得られるかわからない」場合に候補となるFAQや問い合わせ内容が複数表示されるため、入力の補助だけでなく顧客のリテラシー不足を補うことができます。特にコンシューマー向けのチャットボットの場合には初めて訪問した際に何を入力すればいいかわからなくなりがちです。このような場合に何かしら文字を入力することで候補がでてくる入力補完機能は有効となります。

また、チャットボットを運営する企業側においてもメリットはあります。候補を提示することで顧客が入力されたワードから準備しているFAQや問い合わせ内容を明示的に誘導することができるため、顧客が入力されると必ず発生する入力のブレを低減することができます。入力のブレを低減することで任意に入力された場合にヒットせず、チャットボットから「回答が見つかりませんでした。」と返されるケースを減らすことができます。

デメリット

これだけ見ると、入力補完機能についていいことづくめのように感じられますが、入力補完機能にもデメリットはあります。1つは入力とFAQや問い合わせ内容を紐付けるデータ登録が必要になることです。このデータ登録はツールごとに方法は異なりますが、大きく分けると以下の3種類になると考えます。

  1. 定型文を登録しておき、入力に関わらず入力補完プルダウンに表示する。
  2. 定型文を登録し、該当の定型文をプルダウンに表示するためのキーワードを設定し、入力に則ってプルダウンに表示される定型文を動的に変化させる。
  3. FAQに対してキーワードを登録しておき、入力に則ってプルダウンに表示するFAQを動的に変化させる。

1,2についてはFAQ以外にプルダウン用の定型文の作成も必要になるため、運営側のデータ作成コストが増えていきます。FAQのデータを増やせば増やしたFAQに対応する定型文の作成が必要になるため、運用コストが上がっていくものと考えられます。

2,3についてはキーワードの設定が必要になりますが、このキーワードはどのような入力が顧客から行われるか想定がつかないので、さまざまなデータ収集が必要になってくると考えられます。

このように、運用コスト面におけるデメリットがあるのですが、顧客の入力の手間を削減し離脱を抑制できれば費用対効果として考えられる企業様もいらっしゃっると思います。しかし、入力補完機能に対して当社が考える最も大きなデメリットは「潜在的なニーズ、意見の取りこぼし」です。明示的な誘導は顧客の動線を把握できる一方で、顧客が抱える潜在的な課題や要望といったものを見えにくくしてしまいます。例えば、請求書の印刷について問い合わせをチャットボットに行った場合、すでにあるFAQや問い合わせに関する内容が入力補完されますが、「Excel印刷したい」というように、<機能としては存在していないが顧客が求めているニーズ>などは入力されにくくなります。もちろん要望入力フォームを準備することで拾えるようになるかもしれませんが、どうしても潜在的なニーズというものはレールを敷かれると入力されなくなることが多いです。

レコメンド機能

レコメンド機能と聞いて一番先に皆さんの頭に思い浮かぶのは、某大手ECサイト上で表示される「あなたへのおすすめ商品」ではないでしょうか。自分がECサイト内を行き来した商品閲覧履歴や商品購入履歴から、その商品に付与されたタグが自分のIDに紐付き関連商品がレコメンドされる仕組みです。チャットボット上では、閲覧回数の多いFAQや問い合わせ内容を最初に提示し、顧客が求めている情報じゃないですか?という形で会話を進めていく機能になります。ECサイトのように、自身がよく質問しているカテゴリのFAQや問い合わせ内容を提示したり、チャットボットに他の顧客からも含めて閲覧回数の多いFAQや問い合わせを提示するなど、その機能は多岐に亘ります。

メリット

レコメンド機能には、顧客が問い合わせたい内容と合致すれば入力するまでもなく回答にたどり着けるという大きなメリットがあります。レコメンドの方法はどうあれ、より閲覧の多いFAQや問い合わせ内容を提示するため、多くの顧客が求めているものである可能性が高くなり顧客満足度も得られることでしょう。さらに、パーソナライズ機構を持っているチャットボットでは、よりマッチしたレコメンドが提示できるためコンバージョンも高い確度で得られると考えます。パーソナライズとは上記のECサイトで言う「ECサイト内を行き来した商品閲覧履歴や商品購入履歴から、その商品に付与されたタグが自分のIDに紐付いた関連商品」のことです。チャットボット上では顧客自身がよく閲覧しているFAQや問い合わせ内容が属するカテゴリを顧客に紐付けることで、顧客がよく知りたがっている情報としてチャットボットが認識します。その結果として、次にその顧客がチャットボットを利用したときには該当するカテゴリのFAQや問い合わせ内容をレコメンドします。顧客としても自身がこれまで知りたがっていた情報に関連したレコメンドが提示されるためレコメンド内に知りたい情報が含まれている可能性が高くなりチャットボットへの入力なしに知りたい情報にたどり着くことができます。

他のメリットとして入力補完機能と同様、レコメンド機能はチャットボットを利用する顧客の入力サンプルの役割を担いますので、「どう入力すればよいのかわからない」という顧客入力の指針にもなります。しかも入力補完機能は何かしら文字を入力しないと候補が表示されませんが、レコメンド機能は初めから提示されていますので、より入力に迷うことはなくなります。

チャットボットを運営する側も、顧客の閲覧回数の多いものや顧客からのフィードバックがよいものを入力履歴から自動で抽出されるため、シナリオ型のチャットボット以外はレコメンド用に新たにデータを準備する必要がなく、運用していくなかでレコメンド精度が自然に上がっていくという効果が得られます。また、入力補完機能と比べると「潜在的なニーズや意見」のキャッチアップもでき、レコメンドされていないものについては入力の自由度もあるため顧客の潜在的な要求が入力されやすい傾向にあります。

デメリット

シナリオ型のチャットボットの場合は、入力補完機能同様、レコメンド用データの準備が必要になります。

また、昨今のコロナ禍だったり、季節モノ、人事異動など特定の期間にレコメンドしたいなど時期や時勢に依存するFAQや問い合わせに対しては、入力履歴全体の比率からすると低い傾向になってしまうためレコメンドされてこないといったデメリットも存在します。但し、レコメンドする入力履歴の対象期間を絞り込むことによって時期や時勢に依存した場合でも対応できるツールもあります。ここはチャットボット開発ベンダーに確認するとよいでしょう。

まとめ

上記は以下の表にまとめられます。

項目入力補完機能レコメンド機能
パーソナライズ対応×
潜在ニーズ、意見の把握×
顧客リテラシーの平準化
コンバージョン精度の成長
入力負荷の低減
データメンテナンスの負荷×
期間限定企画への対応
動線の把握×

当社が提供する「ENOKI5.0」はこの度レコメンド機能に対応しました。当社のレコメンド機能は

  • カテゴリ別
  • 参照回数の多いデータ

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